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バスケット分析とは?
概要や分析手法を解説

企業にとって「どのようなものが売れるのか」といった商品の展開・配置などは、頭を悩ませることも多い課題といえます。こうした課題を解決するため、注目されているのが「バスケット分析」です。バスケット分析とは、一体どのようなものなのでしょうか。そこで、この記事ではバスケット分析の概要や手法、具体例を解説します。

バスケット分析とは、特定の商品とあわせて購入されることの多い商品を分析する解析手法です。データマイニングの解析手法のひとつであり、場合によっては「マーケットバスケット解析」と呼ばれるケースもあります。バスケット分析は商品の相関性を分析することが主な目的。購買につながりやすい商品、つまり「よくあわせ買いされやすいもの」を見つけるため手法です。

バスケット分析の「バスケット」とは消費者の買い物かごを表しており、それを一単位として扱います。バスケット内にある同時購入された商品を分析することによって、消費者の「共通する傾向」を洗い出すことが狙いです。その分析結果をもとにマーケティング施策を練られます。具体的には、販売に力を入れるべき商品の特定やキャンペーン企画の立案などに役立てられます。人物像やライフスタイルが明らかになれば、その対象への新たなアプローチ方法を考えられるでしょう。くわえて、店内の商品配置の変更に生かせます。一緒に購買されやすいもの同士を近くに設置しておけば、売上アップを見込めます。日々売り場のレイアウトに悩む機会を減らせるでしょう。

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バスケット分析の有名な例として「ビールとおむつ」というものがあります。1992年のアメリカのドラッグストアで、とあるコンサルティング企業がデータ解析を行いました。内容は25店舗における、120万個の買い物かごの中身をデータ分析するというものです。その結果、「金曜日の17~19時の時間帯は、おむつとビールを同時に購入する30~40代の男性客が多い」と判明しました。このデータからわかるのは、「単身世帯ではないこと」「おむつを使う乳幼児が家庭内にいること」「自宅でビールを好んで飲む傾向にあること」などの情報です。加えて、時間帯から「昼間に仕事をしており帰宅前に来店した可能性が高い」こともうかがえるでしょう。

これらの情報から「おむつの買い出しを頼まれた父親」という人物像が浮かび上がり、おむつを買いに来た父親がついでにビールも買っているという説が唱えられたのです。この分析結果を参考に、ドラッグストアでビールとおむつを隣に陳列したところ、売上がアップしました。このように、バスケット分析で人物像を明確化させることで、売上アップやマーケティング施策を練るときの材料として役立てられます。

バスケット分析と並び、ビジネスシーンで耳にする機会も多いのが「アソシエーション分析」という単語です。バスケット分析はアソシエーション分析のひとつに分類されます。アソシエーション分析のなかでも、「POSデータ」「レシート」「トランザクションデータ」などを分析するものがバスケット分析と呼ばれています。

アソシエーション分析とはビッグデータのなかから、意味を持つ関連性や統計的なパターンを抽出するマイニング手法を指します。4つの評価指標を使って、アソシエーションルールを評価することが基本です。アソシエーション分析では大量のデータのうち、「もしもこうだったらこうなるだろう」という関連例を見つけ出すことが主な目的です。

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バスケット分析を実施する方法

実際にバスケット分析はどのような方法で行われるのでしょうか。バスケット分析を実施する際の方法を詳しく見ていきましょう。

バスケット分析では4つの指標を使って対象の相関性を示します。評価指標は「支持度」「信頼度」、「期待信頼度」「リフト値」の4つです。商品Aと商品Bの関係性を調べる場合のケースを例として、それぞれの指標の概要をチェックしていきましょう。

支持度とはすべての顧客のうち、商品Aと商品Bを同時に購入する顧客の割合です。支持度は下記の計算式で求められます。

支持度 = 同時購入者数 / 購入者全体数

信頼度とは商品Aを購入した顧客のうち、商品Bを同時に購入した顧客の割合です。信頼度は下記の計算式で求められます。

信頼度 = 同時購入者数 / 商品Aの購入者数

期待信頼度とはすべての顧客のうち、商品Bを購入する割合です。期待信頼度は下記の計算式で求められます。

期待信頼度 = 商品B購入者数/ 購入者全体数

リフト値とは期待信頼度(商品Bを単独購入する割合)に対する、信頼度(商品A購入者のうち商品Bを購入する割合)の割合です。リフト値は下記の計算式で求められます。

リフト値=信頼度/ 期待信頼度

このリフト値が高いほど、「商品Bは単品ではなく商品Aと同時に購入されやすい」ことがわかります。リフト値は1以上と算出されたとき、「起こりやすい」と判断する指標になります。

それぞれの指標を計算したら、表を作成して相関性を可視化させます。作成した表に相関性の数値を当てはめることで商品の併売の傾向が可視化され、より理解しやすくなります。

実際に具体例を見ていきましょう。

【購入者数】

鶏肉:30人

たまご:75人

玉ねぎ:30人

玉ねぎ+鶏肉:20人

玉ねぎ+たまご:20人

そして、全体の購入者数を100人と仮定すると以下の値が算出されます。


商品A 商品B 支持度 信頼度 リフト値
比較1 鶏肉 玉ねぎ 20% 66.7% 2.2
比較2 たまご 玉ねぎ 20% 26.7% 0.9

比較1と2は支持度だけで見ると同じ値になりますが、信頼度は全く異なります。たまごは単独購入される割合も高いため、比較2ではこのような値の信頼度になります。

さらにリフト値を見ると比較2は1未満であるため、玉ねぎはたまごと同時購入されるよりも単独購入されやすいといえます。逆に、比較1を見ると玉ねぎは単独より鶏肉と同時に購入されるほうが2倍多いと判断できます。

バスケット分析はただやみくもに実施すれば良いというわけではありません。取り組む際はいくつか注意すべきポイントがあります。注意点を把握しておくことで、より有意義な分析を行えます。具体的にどのようなところに注意すればいいのか、ポイントを確認していきましょう。

バスケット分析を実施する際は、商品の組み合わせに注意が必要です。なぜなら、購入パターンを分析する際、「商品ごと」もしくは「カテゴリーごと」などの組み合わせ方によって、分析結果が大きく異なるためです。商品ごとの組み合わせで分析をする場合、商品ごとの詳細な結果が得られるでしょう。その反面、組み合わせパターンが多くなることで、母数が少なくなり誤差が生じるリスクが高まります。

一方、カテゴリーごとの組み合わせの場合は、母数が増えるため分析結果の精度が高い傾向です。ただし、母数が多いぶん詳細が判断しづらいという側面があります。このように、組み合わせごとに異なる特徴があります。双方のメリット・デメリットをきちんと理解したうえで、組み合わせを検討しましょう。

バスケット分析の際は「普段から売れ筋の商品は対象外とする」ことが重要になります。その理由は、もともとよく売れている商品はデータの分析結果から顧客の傾向が読み取りにくいためです。具体的には、季節やキャンペーンなどの影響を受けにくく、幅広い顧客に求められる商品は分析対象から外したほうが良いでしょう。たとえば、タバコが挙げられます。タバコは個人のし好品であり、季節やキャンペーンなどに売れ行きが左右されにくいためです。さらに、年代や性別を問わず購入されやすいミネラルウォーターも同様に対象から除外することが無難といえます。

注意したいのが「分析結果をそのまま売り場に反映させない」ことです。分析の結果として、全く異なるカテゴリーの商品が同時に売れていることもあるでしょう。しかし、その商品をそのまま隣に並べて販売することは、避けたほうが良いケースもあります。なぜなら、顧客がその陳列方法に違和感を覚えてしまう可能性があるためです。

たとえば、スーパーで分析を行った結果、「小麦粉」と「食器用洗剤」が同時に売れやすいことがわかったとします。しかし、これらの商品が隣に陳列してあると、顧客は違和感や不信感を持ってしまう原因になり得るのです。このような事態を避けるため、分析結果を売り場に反映させる際は注意を払う必要があります。隣に並べて販売する以外にも、分析結果をマーケティング戦略に生かすことは可能です。具体的には、同じ日を特売日に設定して併売を誘導する方法があります。併売の可能性が高い商品同士に「特売」という関連性を持たせることで、売上アップを見込めるでしょう。

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バスケット分析の語源になっているのは、「買い物かご(バスケット)」です。
この「買い物かごに」一緒に入れて同時購入している商品を分析するのが、「同時併買」となります。では、どのようなポイントで分析すればいいのでしょうか。当サイトに掲載している"IDレシートデータ"活用事例を紹介します。

2022年6月、フードペアリングを「からあげ」に限定した新しいコーラ「ペプシからあげ専用」が発売されました。商品名の通りに、「ペプシからあげ専用」と「からあげ」が、同時併買されているのかを調べました。レポートの中から、ポイントとなる一部を抜粋して紹介します。

■まずは、ベンチマークを設定して比較する
「ペプシからあげ専用」と「からあげ」の「同時併買率」を算出しても、その数値が高いのか低いのかは、単独の数値では判断が難しいものです。そのため、まずはベンチマークとなる対象商品を設定します。

今回の記事で設定したのは、「コーラ飲料全体」の「からあげ併買率」でした。
様々なコーラ系飲料全体と比較して、「ペプシからあげ専用」の「からあげ併買率」が高ければ、「からあげと一緒に購入されている」と判断するようにしました。そこで、両者の「からあげ併買率」を比較したのが、下記の結果です。


「コーラ飲料全体」と「ペプシからあげ専用」の「からあげ併買率」


「ペプシからあげ専用」の「からあげ併買率」が、「コーラ飲料全体」よりも3ポイント高く、確かに「ペプシからあげ専用」は「からあげと一緒に購入されている」様子が見えてきました。

■併買商品からの逆引き
次に、「からあげ」から見た「同時併買商品」を逆引きしてみます。
そうすると、「からあげ」と相性のいい飲料が見えてきます。

「からあげ」と相性のいい飲料といえば、ビールや酎ハイなどのアルコール飲料もイメージできませんか?

ということは、時間帯ごとに「からあげ」の同時併買商品は、異なるかもしれません。br> 夜間帯前後となる、「19時前まで」と「19時以降」で比較してみました。分析では「からあげとの相性度」として、同時併買分析から得られる「リフト」という指標を活用しています。




やはり「19時まで」は、アルコール系飲料のランクは下位になっていますが、「19時以降」では、アルコール飲料が上位となりました。

ということは、店舗の陳列において、昼間は「からあげ」の前に「ペプシからあげ専用」の商品やPOPを並べておき、夜間帯には酎ハイなどのアルコール飲料に切り替えるという工夫で追加購入を促すことにつながるかもしれません。

この記事では、上記以外にも様々な切り口で、レシートデータを分析していますので、「バスケット分析」により、どのようなことができるのかの参考にしてみてください。
詳しい分析結果は、こちらをご覧ください。
https://receiptreward.jp/solution/report/pepsi-karaage.html

また、その他のいろいろな視点での"IDレシートデータ"活用事例は、こちらをご覧ください。
https://receiptreward.jp/solution/report/

バスケット分析を行うことで、売り場のレイアウト改善やマーケティング施策の構築に役立てられます。バスケット分析を実施する場合は、分析対象から外したほうが良い商品や、売り場への反映方法などのポイントをきちんと押さえておくことが大切です。バスケット分析によって有益な情報を取得し、より効果的なマーケティングを実現させましょう。

バスケット分析に使えるレシートデータの魅力は、横断的に購買データを分析できる点です。具体的にはレシート1枚で、日付・時間・商品名及び金額(値引・単価・個数)・合計金額・電話番号、さらには購入した店舗のチェーン名・店舗名などの情報からユーザーのリアルな購買行動を把握できます。

「IDレシートBIツール」なら、消費者の購買や併買のデータを、店舗・カテゴリーを横断的に確認できます。膨大なデータを自社で集計・分析するには時間がかかるという場合に利用すると、効果測定の手間が大幅に短縮できるでしょう。また、同ツールでは、独自で構築した膨大なレシートデータから、コンビニエンスストア・スーパー・ドラッグストアなどの店舗別の売れ行きを可視化しています。POSデータでは見えづらかった自社商品の「買う人」と「買われ方」をしっかりと把握できるため、自社と競合商品の実売価格・売上が確認でき、顧客の理解だけではなく、商談時の資料としても利用可能です。

「IDレシートBIツール」の詳しい情報はこちらをご覧ください。

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